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華頂宮とシャルル・ボヴァリー

昨日は15時過ぎまでバタバタしていたので、その後はまた三島由紀夫を読んでました。

「頭文字」という短編で、20歳を越えたばかりのころ、先輩から、
「のりこちゃんはこれを読まないとダメ!!」
と強く勧められたものでした。

読み返し、調べてみて意外だったのは、「華頂宮」というのが三島の創作ではなく、実在してたこと。
とはいえ、三島がこの小説を書いたころには断絶していたようではありますが。

さて。
この「頭文字」という短編は、三島版・ロミオとジュリエットというようなお話です。

以下ネタバレなので、読みたくない人は流してください。

明治時代の華族にも、いろいろなしがらみがあったようで。
朝倉家と千原家の間は、一人の女性をめぐってのいざこざが原因で、深い亀裂ができていたという設定です。

そんな中、朝倉季信と千原渥子は恋に落ちる。
そして同時に、渥子は華頂宮殿下から思いを懸けられるというなんともはや絶望的な状況なわけです。
華宮頂殿下はクリケット大会の際、球を渥子の胸にあててしまい、そのことを心配するあまり、彼女を恋してしまうんですね。

しかしこの時代の若者の常として(?)、二人には「あきらめ」があるようでした。
渥子が宮家へ輿入れするに先立って、二人は秘密裡に関係を持ち、思い出を刻みます。
すなわち、ナイフでもって渥子の胸に二人の頭文字を刻み込むんですね。
そう。宮の球があたり、蒼い痣を作ったその場所に……。

浅い傷ですから、これは結婚の日までには消えました。
渥子が人妻となると同時に、朝倉中尉は日露戦争、しかも最前線へと出兵します。

宮殿下は渥子を細やかに愛された、と三島は語ります。
しかし出産の後、渥子が入浴していると、確かに消えたはずの頭文字が色鮮やかに浮かび上がり、その数日後、殿下の親友でもあった朝倉中尉が戦死したとの報せが舞い込んだのでした。

渥子は顔色一つ変えずそれを受け止めますが、以後喪服しか着ることをせず、殿下と寝室を別ちます。
それは誰の目にも「狂気」としか思えなかった。

そして日露戦争終戦後……彼女は座敷牢でひっそりと息を引き取ります。

そのしらせを受けた殿下は、「気高い」微笑みでそれを受け止めた、と。

要約すればそんなお話です。
ディテールには三島らしい暗示やら隠喩がちりばめられていますが、それを説明するぐらいなら、小説を読んでもらう方が速い(笑)

で、私はこれを読み終わって、
「わぁ、シャルル・ボヴァリーだぁ!」
って思ったわけなんですよ。

フローベルの「ボヴァリー夫人」は、これまた不倫の物語です(^^ゞ
まじめだけど平凡で、妻をかわいがってはいるけれど妻に関心はないという男、シャルル・ボヴァリー。

エマは退屈のあまり浮気をし、男に弄ばれたあげく自殺をします。

そんなことがあってもシャルルはエマを「崇拝」し続けるんですね。
そして彼女の浮気相手であったレオンに対し、「あなたを恨んでいません」とつぶやく。

この小説を読んだ当時、私はまだ本当に幼かったので、思いっきりエマの恋に感情移入しました。
そして、シャルルが大嫌いになりました(笑)

つまりね。
シャルルは決してエマを見てないんです。
美化し、理想化したエマしか見てない。

エマの苦悩に気づかず、彼女の死後、その苦悩をさえ信仰の対象としている。
彼女が多大な借金を残して死ぬと、苦しい生活の中でエマを正当化し、やっぱり信仰する。

それをはたして「愛」と呼ぶことができるのでしょうか?
月並みな表現をすれば、それはエマへの愛ではなく、エマという神聖を通して自らを愛しているに他ならないということになるんじゃないかと思います。

エマはシャルルから愛されたという実感があったのかな?
実感がもてたはずはないでしょうね。
シャルルが愛したエマは、どこにも実在しないんですから。

でも、「頭文字」の華頂宮殿下は、シャルルよりははるかに残酷な気がします。

「本当の渥子を見ていなかった」という点では、シャルルと同じかと思います。

だけど彼の妻に対する感情は、「信仰」というような美しいものではなく、「同情」でした。

「豊かに持っている者」が、余剰分を誰かに分け与えるように、妻を愛した……のだと思います。

渥子は自分を愛さない殿下に、自らも愛を感じないまま、恬として嫁ぎ、自分の中にある真に愛する人のことを表面上忘れました。
そしてその存在を思い知るや、きっぱりと殿下を拒否し、座敷牢に入れられてもなんら言い訳をせず、静かに亡くなるのです。

朝倉中尉は渥子の婚約を知るや、自ら危険な戦地への出兵を希望し、その地で亡くなりました。

そして殿下は「最愛の妻」の死のしらせに、「気高く」微笑んだ、と。

あ~~~~~~~、怖い話だ(^^ゞ

殿下は一切苦しまないんですよね。
シャルルは苦しんだだけ、それがどれだけ的外れでも人間らしいや(^^ゞ

でもでもでも。
この小説を勧めた先輩は、

「のりこちゃんは渥子のようにならなくちゃダメ!!」

っておっしゃったんすよ(^^ゞ


無理。
堪忍してください……。


ただね。
私たちが見てる「誰か」は、本当の「誰か」なんでしょうか?

私は旦那を見てるけど、私が思う「旦那」は、たぶん「旦那そのもの」ではないんだと思うんですよね~。

だからこそ、「ちゃんと見ようとする」ことは大事なんだと思う。
先入観なく、相手を見ようとすることが、「愛」なんじゃないかなぁとか。


そんなことを考えてるとですね。

やっぱり、シャルルや華頂宮は怖い人たちだなとも思います。

決して対象物を見ないんですよ。
自分の世界から決して出ようとしない。

外に別の世界があるのを知らないのか、知ってて無視しているのかはわかりません。

でも、自分以外のものに心を添わせようとはしないんですよ、決して。
自分の世界観で相手を理解したつもりになり、そして相手を評価するだけ。

ね?
怖いでしょ。

でも、人間は誰だって、シャルルや華頂宮になり得るってことの方がもっと怖いのかもしれません。

先輩はそれが言いたかったのかなぁ?

「のりこちゃんは、『人間』になりなさい」
って。

「本当に人を愛しなさい」
って?

さて、わかりません(笑)

ただ、「私が知ってる怖い話」のうち、上位にこの「頭文字」を入れようと決めました(笑)
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形而上学って言うのかな?:南里

「愛」
というものを考える時
人による感覚や想いという
フィルター(偏見)が
入るように思うんです
結局
太陽を見ているように
見えない裏側を見ずして
太陽全体が明るく
輝いていると言っている

こんにちは〜♪

「愛」というものに
変わらない正しさや安定、理性の頂点
まともなさまや、絶大なる理想的な生を
求めてしまいます

確認のとれないもの
形のないものに
真理性を与えるという作業なんでしょうね

私の得意な「神だのみ」でございます

これは
「正しい」

「神さまがほほえむこと」
と考えるのとよく似ていると思いました
「愛」
すなわち
「神さまの想いや行いを生き写すこと」
となると思いました

やはり
「お天道様は見ているよ」
と言われ続けたことの
苦し紛れの遠吠えのようで
ほんとにスミマセン

人の一途な愛情を貫かせるもの
神さまの想いや行いなのか
神さまがほほえむのかどうかも
「愛」というものに
私の力では
それに確たる答えを与え得ないと思いました

それは、神さまに似せて作られたはいいが
神さまではないことの何よりの証であるように思います

ただ命があること
この世が続き時が動くことに
幸福を感じる時
神さまの愛がふりそそぐ世の中であることを
生きながら感じているのかもしれません

人は必ず死ぬ
人は必ず過ちを犯す
人は必ず何ものかを愛する

そんな真理を確実に宿しながら
「生きる」って何?
「正しいこと」って何?
「愛」って何?
問い続ける人生(たび)は
苦し紛れに一歩一歩進むようなものですよね
そんな汗を
神さまは、微笑んでみている様な気がする
という感覚が好きなだけなんですけど・・・

ほんとスミマセン

困難や 苦悩・孤立に 打たれども
 生きたる汗を 神は喜ぶ
”若旦那〜♪、なんり、深感恩

No title

突き詰めれば、
「人間が本当の意味で何かを愛することはできない」
っていう結論になっちゃうのかもしれません。

だからこそ、「この人をちゃんと愛したい」と思い続け、願い続けることが重要なのかもしれないですね。
難しいですけど。

人間って不完全なものですから、何かを完ぺきに成し遂げようと思わなくていいんだと思います。
ただ、なるべく完璧であれるよう、頑張る。
汗をかく。
それが重要なのかなって。

若旦那の言う、
「そんな汗を
神さまは、微笑んでみている様な気がする 」
この感覚、私もまったくもって同じです(#^.^#)
プロフィール

のりちゃん1968

Author:のりちゃん1968
大阪生まれ、大阪育ちのおばちゃんです。
40の大台を超えて、ますますおばちゃんに磨きがかかってます。

HP:http://www.norichan.jp/
Mail:norichan★norichan.jp
(★を@に替えてください)

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